導入をご検討の方へ
3

【いい人】の落とし穴

「はじめに」の冒頭でも触れたが、経営者もしくは人事の方が異口同音に仰るのは『いい人が採用できれば事業は成長する』ということである。

さて、ここで言われる【いい人】について今回は述べていきたい。
確かに【いい人】は欲しい。また【いい人】が採用できれば事業は前に進む。
しかしながらこの【いい人】は少し曲者である。なぜならもうお気付きのとおり、【いい人】の定義、基準が人や会社によって千差万別だからである。当然のことながら業種や職種が違えばそれは別のものであるのは明白だが、同じ規模の同じ業種の同じ職種でも【いい人】の定義はかなり違う。

2000年代前半、本田技研工業株式会社の若手人事担当は、技術職の採用において、トヨタ自動車株式会社は採用競合では無いと断言した。彼曰く、「なぜならホンダは本田宗一郎を教祖とし、ホンダフィロソフィをバイブルとする宗教集団だから。たまたま現在は二輪車・四輪車・汎用製品(船外機、発電機、芝刈り機、汎用エンジン、耕うん機など)の開発、製造、販売を主力事業としているが、将来は分からない。一方、トヨタ自動車さんは世界に冠たる自動車メーカーである」と言う。なので、当時の四輪技術者募集において、トヨタ出身者からの応募を受け付けないわけではないが、メインターゲットではないという。

要約すると、ホンダで【いい人】はトヨタでは【いい人】では無い。つまり求めるスキルや知識は近しいが、組織文化や価値観、戦略が違うので【いい人】も異なるという事だ。確かにホンダでは、「小説 本田技研」なるノンフィクション小説が作られており、ルールを無視したり組織を飛び越えて行った開発秘話が、まるでドキュメンタリー番組のごとく紹介されている。現在も社内で読み交わされているとは、まるで奨励しているかのようだ。

当時のホンダといえば、今ほどハイブリッドカーはブレークしていなかったが、バイオエタノール対応車や電気自動車、水素自動車をはじめ飛行機や耕うん機など、次世代事業を複数準備している最中であった。そのような状況下で、(あえて表現するが)四輪だけのエンジニアで志向や価値観が合わない人材は、今後のホンダでは厳しいと判断したのかもしれない。

これは一例ではあるが、自社や自部門にとっての【いい人】は誰なのか?どんな人なのかは、可変の部分も不変の部分もあるであろう。採用に取り組む上で、ぜひ自社の経営陣や現場とディスカッションしたいテーマである。